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interview鹿児島の経営者 対談シリーズ

鹿児島の経営者 対談企画05

投稿日:2024年03月10日

鹿児島の経営者 対談企画05

  • 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)
    川商ホール(鹿児島市民文化ホール)
  • 前原総合医療病院
    前原総合医療病院

4期16年にわたって鹿児島市長を務め、現在は同市の教育、学術、芸術文化および生涯学習の振興に寄与することを目指す公益財団法人かごしま教育文化振興財団理事長の森博幸氏。日置市を中心に医療・介護・福祉分野で47事業所を展開する医療法人誠心会グループ副理事長で、前原総合医療病院で「痛みの専門医」として診療に当たる前原光佑氏。お二人に教育文化や医療を通して地域住民の心と体を整え、生活の質を上げる取り組みや地域貢献への思いを語ってもらった。

「医療は心」「市民が主役」を柱に

前原 幼少期に親が最初に買ってきた漫画が「ブラックジャック」で、次に買ってきたのが「スーパードクターK」だったので自ずと憧れを抱き、医師なることを目指しましたが、今思えばすごく意図を感じます。また、もともと「痛み」に興味があり、研修医時にペインクリニック内科、整形外科、麻酔科のどれを専門にするか迷っていた際に、相談した先輩に「誰もやったことないんだから、君が全部やればいいんだよ」と言われたのが人生の岐路だったと思います。その後、とても大変な道のりでしたが、複数の専門を取得し、現在「痛みの専門医」としてお仕事をさせて頂いてます。
また、私は医療をするにあたって「人をかえりみない医療は医にあらず」、常々「医療は心」と思っています。知識や技術を高めることはもちろん重要なことですが、患者さんの心に寄り添い、満足度を高めることはそれ以上に大切なことではないでしょうか。私は神様ではないし、医学は魔法ではないので、全ての人を完璧に救えるとは思っていません。しかし、私の目の届く範囲の人達は救いたいと思いますし、幸せでいてほしいと、心から思っています。そして、「先生に出会えて本当に良かったよ」と言ってもらえるような医療をしていくことが私の想いであり、信念です。

 市長として16年間、市政運営に携わってきました。市長になったのはちょうど桜島、吉田、郡山、松元、喜入5町との平成の大合併の直後です。その新しい鹿児島市を、それぞれの歴史を受け継ぎながらいかに発展させていくかが私のミッションでした。その際に心がけたのは「市民が主役」ということ。市民が何を考え、希望しているのか、何に興味、関心があるのか。常にアンテナを張りながら政策を立ち上げていきました。
かごしま教育文化振興財団は、鹿児島市が設置している川商ホール、谷山サザンホール、近代文学館、メルヘン館、科学館、ふるさと考古歴史館の管理運営と、教育や学術、芸術文化、生涯学習に関する各種事業を実施しています。理事長として心がけているのは、まずは来館される方々の安全を確保し、快適に利用していただくこと。来られる方々が主役で、優れた芸術文化に触れて満足してもらえる環境整備をしっかりしていきたいと考えています。市長時代は多忙で機会は少なかったのですが、今はなるべく生の交響楽や演劇、落語などに触れるようにしており、芸術文化の大切な役割を実感しています。

世の中に一つだけの独自性こそ価値

森博幸
「市民に寄り添い、学ぶ喜び提供」
公益財団法人かごしま教育文化振興財団
理事長 森 博幸
公益財団法人かごしま教育文化振興財団 HP

前原 お恥ずかしい話ですが、私は若い時勘違いをしていました。およそ一流と呼べる病院で経験を積み、その技術を提供すれば、患者さんは満足すると思っていました。しかし、ある患者さんに「痛みは治ったけど、できれば私の希望も聞いてほしかった」と言われたことがあります。落ち込む私に妻は言いました。「医療のために患者さんがいるの?そうじゃないでしょ。患者さんのためにあるのが医療でしょ」妻にそう言われた時、目からうろこが落ちる思いでした。大事なのは自分の満足ではなく、患者さんの満足なのです。そう悟った後は、常に患者さんがどうしてほしいのか、それだけを思えるようになれました。

 市長時代はいろんな政策判断について、最終的には自分が決めて全責任を負わなければいけませんでした。行政にしろ医療にしろ、いろんな意見があります。患者さんに寄り添って患者さんの望む治療をするけれども、最終的な判断はお医者さんがすることになります。そのためには常日頃から患者さんと心のつながりをつくっていくことが大切なのかなと思います。ところで、誠心会のホームページには理念に「日本一優しい施設を目指す」とあります。

前原 一昔前と違って、今は患者さんが医師や病院を選ぶ時代になっています。私は、それは正しいことだと考えています。患者さんに選ばれる病院、医師になるためにはどうすればよいか考えてみました。ものの価値を考える時に一番簡単な基準は、「この世に一つしかないかどうか」です。選ばれる医師、病院になるためには自分本位ではなく、患者さんの希望に沿ったアイデンティティを持つべきで、私はそこに『心』を求めました。患者さんの心に寄り添う日本一優しい医師と病院を目指すことが私と誠心会の目標です。

 高度の医療技術に加え、患者さんの悩みや話に耳を傾け、寄り添ってくれるお医者さんやスタッフのいる病院は心強い限りです。患者が医師や病院を選べる時代は、医師や病院の資質を見分けることが患者側に求められます。前原先生のようなお医者さんがたくさん育ってほしいなと願います。

前原 森理事長にそう言って頂けて、お恥ずかしいですが、とても光栄です。私自身がまだまだ人としても医師としても若輩者であり、人様に偉そうにお話しできることなどありませんが、患者さんを治すことに人生の価値を見いだせるかどうかだと思います。家族と一緒の時間が少なくなるのも確かですが、患者さんが元気になり、「ありがとう」と言われる瞬間、医師という仕事の素晴らしさを実感します。

副理事長 前原 光佑
「日本一優しい病院を目指して」
医療法人誠心会前原総合医療病院
副理事長 前原 光佑
医療法人誠心会前原総合医療病院 HP

医療や芸術文化で町づくりの一翼に

前原 私は初診時に必ず患者さんに仕事や趣味を聞きます。痛みを取ってほしいのは皆さん同じですが、例えばグラウンドゴルフが出来るよう治してほしいなど、ゴールは人によって様々です。そのゴールを定めて一緒に治療に当たるようにしています。日本一優しい医師と病院を目指すために医師、看護師など医療スタッフだけでなく、患者さんもチームの一員として参加してもらうようにしています。町が発展するには役場と学校、それに総合病院が必要だと言われます。伊集院町に2020年9月に前原総合医療病院が開院したことで、周辺の人口も増加しています。私どもが医療・介護・福祉を通じて暮らしやすい町づくりの一翼を担えれば光栄です。

 当財団は、市民一人一人が生涯にわたり学ぶ喜びを分かち合える地域社会づくりを推進し、鹿児島市の歴史や自然を生かした個性豊かな市民文化を創造することを目指しています。幼児から高齢者まであらゆる世代の方々が学ぶ喜びを感じていただけるような企画、イベントを実施していきます。生の音楽や落語を聴いたり、バレエを観たりすることはストレス解消になり、生きる喜びや豊かな情操を育んでくれます。小さい時からの情操教育、生の芸術文化に触れることは、大きくなってからの生き方や生涯の学習のきっかけにもなります。近代文学館の文学講座の参加者など、学生時代や若い頃にかえって学び直したいという高齢者が多くなっています。さまざまなニーズに応えながら、芸術文化分野でまちづくりをしっかり支え、鹿児島市の発展につながっていければと願っています。

公益財団法人かごしま教育文化振興財団 理事長・医療法人誠心会前原総合医療病院 副理事長