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interview鹿児島の経営者 対談シリーズ

鹿児島の経営者 対談企画04

投稿日:2023年12月30日

鹿児島の経営者対談企画4

  • スターカフェ×タニタカフェ外観
    スターカフェ×タニタカフェ
  • かねこクリニック
    かねこクリニック

乳腺・甲状腺診療を専門に、検診率の向上や、不安を抱える女性が安心して検診・治療を受けられるよう医療技術とともに細やかな対応に努める「かねこクリニック」のウェレット(旧姓・金子)朋代院長。創業80年を超える老舗で調剤薬局としては鹿児島で一番古く、鹿児島市内を中心に14店舗を展開するなかで在宅医療や未病予防にも力を入れている「白男川薬局」の馬庭瑞枝専務。お二人に人や町を元気にする取り組み、地域への思いなどを語ってもらった。

「タニタカフェ」と「女性健診センター」

馬庭 白男川薬局では、発病には至らない軽い予兆がある未病予防への意識を皆さんに持ってもらうことを大きなテーマにしています。今年6月、上荒田店の2階にタニタ食堂とのコラボで「スターカフェ×タニタカフェ」を開業しました。1日に必要な野菜の半分の量をとれるワンプレートメニューを中心に提供しています。体を気遣っているためか比較的年齢層の高い女性客に好評です。病気になってから医療機関の処方箋を持って来るのとは違う薬局をつくりたいと試験的に始めたのですが、カフェの併設でより身近な薬局に感じてもらっています。カフェを検討していた昨年7月、近くで乳がん検診率アップや未病予防に熱心なかねこクリニックのウェレット院長に相談し、背中を押してもらいました。

ウェレット かねこクリニックは1999年に開院し、私は2006年から院長を務めています。乳腺、甲状腺、婦人科のほか、この夏から形成外科・美容外科を始めました。私が院長になったころは日本人女性の乳がん罹患率は約20人に1人と言われていましたが、現在は9人に1人と高くなっています。でも鹿児島の乳がん検診率は緩やかにしか上がっていません。健康への意識がすごく高い人もいる反面、あまり意識しない人もいます。なるべく多くの方に乳がん検診や健康への意識を持ってもらうために女性健診センターを新設しようと考えていた時にちょうど馬庭さんからカフェの話がありました。女性健診センターで受診後、タニタカフェで健康に良い食事をとれるコースを作りたいと考えています。私も時々、カフェを利用していますが、野菜のほかに炭水化物とたんぱく質のバランスなどしっかり考えているなと感心します。

次世代を見据えた薬局&クリニック

馬庭瑞枝専務
「未病の予防で人と町を元気に」
白男川薬局
専務 馬庭 瑞枝
白男川薬局 HP

馬庭 検診では絶食したりして検査後は疲れます。その方たちのためにカフェで健康に気遣った食事をとって帰っていただき、健診センターの受診率を上げるお手伝いができればと思っています。実は、私たち調剤薬局の数はコンビニより多いのです。隣接する医療機関の処方箋ありきで運営していく時代は終わっていて、次のステージを見据えた薬局を鹿児島でぜひつくりたいという考えで未病予防や在宅医療に取り組んでいます。薬局でお薬相談会をすると、薬の相談よりも食事の相談の方が圧倒的に多くなります。そこで管理栄養士を雇って食事指導もしながら薬をいかに減らすか考える次世代型の薬局を目指しています。タニタカフェはその一環です。

ウェレット 当院にはトレーニングマシンを置いたリハビリ室もあり、11月末には筋トレ用の最新のマシンを導入しました。患者さんのリハビリだけでなく、将来的には一般の方の健康づくりにも役立てたいと考えています。筋トレは年齢が高ければ高いほどフレイル(虚弱)や寝たきり予防につながるのでお勧めです。特に体の中で一番大きな太ももの筋肉を鍛えるランジやスクワットが効果的です。今年4月から関連会社で児童クラブを運営しており、夏休みの給食は馬庭さんの方から提供してもらいました。私が小学生の子ども2人を育てながら児童クラブを利用していた際、運営時間や習い事など、さらにお母さんたちのニーズと一致した施設があると良いなと思い習い事付きの児童クラブにしました。

啓発活動や在宅医療を積極的に展開

ウェレット 働く女性が生き生き暮らせるためには、ご本人の健康も大切です。特に女性の乳がんが増えてきている中で健診センターを開設するほか、ピンクリボン運動、町内会や婦人会、企業の研修会などでの講演を通して啓発活動に取り組んでいます。クリニック内で毎年夏に患者さんの集まりである「あおぞら会」や地域の親子も参加して「あおぞら祭」を開き、その中でセミナーも開いています。あおぞら祭はコロナ禍で休止していますが、不特定多数が集まれる環境になれば再開したいと考えています。

馬庭 高齢化の進行で在宅医療のニーズが高まっています。その中で薬剤師は自宅に居ながら安心して治療を続けられるよう、個人宅や施設などに調剤した薬を届けるとともに服薬指導などを行います。その際、楽しい会話やケアが楽になる情報を伝えるなど家族のケアも必要です。「在宅ナンバーワン薬局」を合言葉に、各店舗では自宅でのターミナルケア(終末期医療)やがんの疼痛緩和ケアなど難しい処方にも対応できる設備を整えていっています。上荒田店の1階には内脂肪レベルやヘモグロビン量、骨健康度、老化物質の蓄積レベルなどを測定できる健康ラボを開設して、カフェで食事された方は2機種まで無料で利用できます。今年7月から企業のかかりつけ薬局の取り組みも始めています。健康診断後の従業員のフォローのため健康ラボで健康チェックしてもらい、薬剤師や栄養士が食事など生活習慣の見直しなどについてお手伝いしたいと考えています。

生き生き、安心して暮らせる地域に

ウェレット 私が県外での研修医や勤務医を経て鹿児島に帰って来た時に感じたのは、女性の立場が弱く、会合でも発言しづらい雰囲気があり、仕事や育児に追われている女性が多いなということでした。医師として働きながら、もっと女性が生き生きできる場がたくさんあったらいいな、これを自分のライフワークにしたいなと考えています。医師以外の友人も多く、彼女たちは社会に出ていろんな意見を発信しています。現在はクリニックや児童クラブを通じて働く女性をサポートしながら、将来はさまざまな業種の女性が集まって意見を主張でき、それぞれの能力を発揮できる地域づくりに貢献できたらと思っています。

馬庭 私は旅行会社勤務の後、最初は週2回の事務のパートで白男川薬局に入り、昼の休み時間に近くの施設を回るなど在宅に力を入れ始めたことがきっかけで店舗網が広がり、私自身の能力も磨かれていきました。会社の新規事業を担当しながら、薬剤師ではないのに薬局経営セミナーの講師に呼ばれたりします。鹿児島の在宅医療は東京や大阪より5~10年遅れていると言われます。医療機関と連携しながら地域包括ケアを着実に形にしきたいと考えています。未病予防はもちろん、病気になった人も安心して生活できる薬局経営を通じて、鹿児島に暮らす人たちが鹿児島で過ごせてよかったと思える地域づくりに役立てることを目指しています。

ウェレット朋代院長
「女性のトータルヘルスケアをサポート」
かねこクリニック
院長 ウェレット 朋代
かねこクリニック HP

 

ウェレット院長・馬庭専務